スバル360【てんとう虫の思い出】
小学校の低学年の頃、大の車好き少年の私と同じ趣味で気の合うG君は時間があれば車を見に出かけていた。
今ならわざわざ車を見に行くくらいだから余程珍しいスポーツカーか、
高級輸入車だろうと思うかもしれませんが、獲物は普通の車。
というか自家用車それ自体が特別の時代。
でもさすがにご近所のコロナやブルーバードは総なめにしてしまったので、
休みの日は足を伸ばして(と言っても移動手段は自転車)隣町まで・・・。
遠出の時は必ずMちゃんも誘った。
Mちゃんの兄ちゃんが自家用車を持っているので、
ゴマを擂って乗せていただくための作戦。
「なあMちゃん♪またスバル乗せてくれへん!兄ちゃんにたのんどいてよぉ♪」
我家にマイカーの“パブリカ”がやってくるのは5年後のこと。
G君家に“サニー”が納車されるのに4年の歳月が必要。
つまり今車に乗れるチャンスは夜突然熱を出してブルーバード310か410のタクシーに乗るときか、
Mちゃんの歳の離れたお兄ちゃんのスバル360に乗せてもらうしかない訳で。
ただし前者の場合尻にデカイ注射のオマケ付き!
いま思うと小学生なんか乗せてドライブなんかさぞ最悪だったろう。
でもMちゃんの兄ちゃんはいったって気のいい人で、
休みになるとよく僕達3人を“てんとう虫”に乗せていろんな所へ連れて行ってくれた・・・
小学生から見てもそれほど広くない車内に乗り込みガラスに顔を押し付けて、
過ぎていく景色を同じ後部座席のG君とウットリ眺めていた・・・。
時折漂ってくる排気ガスの匂い、お兄ちゃんの吸うタバコの匂い・・・
ラジオから流れる流行歌・・・
ゆったりと上下に左右に揺れる小さなクルマ・・・
パタパタと聞こえてくる優しいエンジン音・・・
至福にひと時・・・・・。
「おい、降りろ」
「この坂は4人乗りじゃ無理や。2人降りな」
私とG君を坂の下に残し、
360cc空冷直列2気筒、16馬力非力なてんとう虫。
2スト特有の白い排気ガスを吐きながら坂を上っていく・・・
オイルの匂い、かわいい後姿、いい天気・・・横でブウブウ言ってるG君。
てんとう虫の思い出は・・・
オイルの匂いと2ストのエンジン音、それと親切なMちゃんのお兄ちゃん。
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