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洗車スポンジ

屋外広告関係のデザイン等をなりわいにしている関係上机の上で仕事は終わらず、

取り付け監督 俗に言う“現場”がある。

机に向かって一人で仕事をしていると独り言が多くなる・・・気がつくと一人で受け応えまでしている【危ない危ない】

現場は気晴らしにはちょうどいい♪


その日も朝からいささか遠方の現場である。

現場といっても私は高いところが大の苦手なので下から偉そうに指示を出すだけである。

お天気も良く【外仕事なので天気次第で天国から地獄】順調に仕事は進んだ。

きりがついたので遅めの休憩を取ることになった。

プレートを取り付けてみたらどうもステンレスビスでは雰囲気が出ないので急遽真鍮製に変更しかし手持ちが無い。

そこで休憩の合間に“真鍮のビス”を探しに行くことに。

近くにホームセンターらしきものが見当たらないので土地勘のある職人さんに聞いたら・・・

「確か駅前あたりに古い金物屋があったような・・・」

いささか頼りない情報を頼りに駅前に出発。

金物屋さんは案外簡単に見つかった・・・というかコンビニ以外店らしい店が無い。

金物屋さんの前は道が狭くなっているので少し手前で車を止めて店に向かった。

間口2間ほど年季の入ったサッシ手を掛けて矢印の方向に力を入れても一向に動かない。

留守か?

サッシとの格闘をあきらめたころ奥から今どき珍しいオーバーオールを穿いた店の人が現れた・・・

こちらに一瞥をくれ矢印と反対方向にサッシを引いて顔を突き出しこう切り出した・・・

「何やった?」

歓迎ムード満点の対応に面食らいながら。

「真鍮のビスが欲しいのですが」と聞いた。

「サイズは?」

「5X30か40があれば助かるのですが」

「在庫を見てくるまあ入れ」

年の頃80前後のフレンドリーな先輩である。

おやじさんが奥でビスを探している間お店を散策・・・・

やっとこ・ブリキ鋏・ボルト・ナットいろいろな物が箱のまま床から天井まで積み上げられている。

日が傾きだしたダンボールの通路はモノクロームの世界。

「ん?」

そこへ天上から光が・・・・・・

手に取ってみるとほこりを被った黄色い【洗車スポンジ】だった。

そこへビスを持ったおやじさんがやってきて・・・

「そのスポンジは随分前のやで向こうにある新しいのにしとけ」と言った・・・

スポンジの入っている袋に車のイラストが描いてある。

まあ洗車用なので車のイラストは珍しくも無いが・・・・

クルマがスチュードベーカー・チャンピオンなのである。

スポンジは必要なかったけど欲しくなった 欲しい♪

「それは古いでやめとけ」

「いやスポンジやなくて絵がいいから」

「絵?ああスチュードベーカーか」

「知ってるんですか?」

おやじさんは胸のポケットから吸いかけのピースを出して見せながら・・・

「ピースもそうやったやろレイモンド・ローウェイやったか“石鹸から機関車まで”」

「口紅から機関車までです(笑い)」

「そうか石鹸やとおもとった(笑い)・・・・・・・」


おやじさんは若い頃神戸に住んでいて相当“やんちゃ”していたらしい。

アメ車を転がし暴力事件で警察にも何度かお世話になったらしい。

しかし若い頃の無茶がたたり身体を壊してしまい実家に帰り家業の金物屋を継いだんだそうな。


「その後のタイプやけど近所の外人さんが青磁メタリックで屋根がクリームのスチュードベーカー乗っててな

日曜になると金髪の奥さんを乗せてミサへ行きよった それは綺麗なクルマやったわ♪」


おやじさんの武勇伝を聞いていたらすっかり遅くなってしまった代金を払い店を出た。

もう外は薄暗くなっていた車に向かいながら店を振り返るとおやじさんが店の前でけむたそうにピースを吸っていた。

明るいときは気がつかなかったが入口の丁度おやじさんの頭の上あたりに白ペンキでガラスに直接こう書いてあった・・・


【ビス一本からユンボまで】


「おやじさん♪」


R0012472.jpg



















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